研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2013年12月13日金曜日

カーナビとオートライトをリンクするといいと思うが

暗くなると点灯するオートライトを装備しているクルマがあるが、曇りの日などでは、橋の下を通過するだけでヘッドライトが点灯してしまう。

位置情報を持つカーナビは、今どこをどのような状態で走行しているかが分かるはず。

それを取り入れれば、必要のないことでヘッドライトやポジションライト(クリアランスライト)が点灯することもなくなる。

GPSが装備されているのだから、緯度を計算に取り入れれば、夕方の薄暗くなった時点で適正にライトの点灯も行われるはず。

何故、このようなものが組み込めないのか、十年以上前から不思議でならないのだ。

2013年12月1日日曜日

いまだにある、やり尽くしていない状態での自動車販売

モデルチェンジしたばかりのクルマとか、ニューモデルなどは、発売してすぐに買ってはいけない、ということを言われてきたが、一部の自動車メーカーのクルマでは、いまだにその状態が続いているような感じだ。

何故そのようなことが起きるのか、それは、新しいクルマの開発・企画で、販売を担当する営業も同席し、発表・販売時期を何年・何月・何日まで決めるのだが、これは何処の自動車・バイクメーカーも同じ(海外は知らない)。ただし、そのことで問題が出る場合があるということ。

発表・発売時期が近づいて、全ての開発と実験・走行が終了し、何処からも批判されないクルマに仕上がっているのなら問題ないのだが、往々にして、開発から「もう少し時間をくれ、せめて1ヶ月」などという意見が、営業に伝えられる。

「了解、思う存分、納得のいくまで開発を行ってくれ」という、購入したユーザーを第一に考えるメーカーも有るだろうが、言い方は悪いが「未完成でも、とりあえず売ってしまえ」、と計画重視の営業から、逆切れされているような場合があることを見て取れる。

発表・発売が遅れれば、当然利益はその分少なくなる。ライバルメーカーの同様なクルマへ購入者が流れてしまうこともある訳だから、営業としては、会社の利益を考えた場合、それはあってはならないこと。そのため開発グループに対して「発売が遅れたら、いったい何億損をするのか、知っているだろうな」。というような発言が、今でも飛び交うようだ。

このような話は、メーカーの開発者と未完成の話をしているときに聞くことがあるので、そのときには、このような内容で切り返しなさい、とアドバイスする。それは「開発をやりつくしていない状態のクルマを購入したユーザーでも、その内、何かおかしい、ということには気が付くし、ネットでもそのクルマに対する評価が出てくれば、当然未完成のクルマを売りつけられた、と分かる」「こうなれば、リピーターになってはくれないし、購入を希望するお客を紹介してもくれない」「そのときの損失は、いったい何十億になるのか考えたことはあるか」。という内容である。

これが、どれほど効果を生むか分からないが、実際に販売店では、直接矢面に立たされているわけだから、開発をやりつくしたクルマと、そうでないクルマのお客さんは、当然気持ちが違うはず。それをダイレクトに感じている販売店からの意見も重要だ。

見た目には分からない未完成・開発途中のクルマ。自動車ジャーナリストでも、それを見極められない方は多いので、当然、一般ユーザーが、数十分ディーラーで試乗しても分かるはずがない。雑誌の試乗記にも欠点や未完成と思われる内容が書かれていることは少ないからだ。

コンピューターによる解析が進んでいなかった時代では、ハード(ボディ構造、サスペンション構造と作動軌跡など、制御部分ではない)に問題や未完成部分を見ることはあった。コンピューターによる解析技術が進んだ現在でも、ハード部分の未完成が絶対ないわけではないが、やはり制御と、その使い方に未完成部分を見つけることがある。

欧州車には個性とか思い違いという特徴はあっても、おかしなところは感じたことがない(認識が足らないのか?)ので、開発をやりつくしてからでないと、販売店に並ばないのかもしれない。

2013年11月16日土曜日

エンジン・チューニングの極意。それはヘッドボルトを締めないこと

「いきなり何だ」と反論を返されそうだが、ヘッドボルトを持つもの?は、それを締めなければガス漏れ、水漏れが起きて当然なので、あくまでも極意であることを念頭に入れて読んで欲しい。

バイク・エンジンでの経験談を下に話を進めると、それはレースで得た結果がある。

数十年も前のことだが、筑波サーキットで、当時盛んに行われていたミニバイクレース。そのレース用にマシンを製作した。

ベースとなったバイクはヤマハのGT80で、当時はヤマハからレース用の部品が発売されていたので、シリンダー回りはそれを使用したが、ヘッドはヤマハのチューニングパーツを製作販売していた“スペシャルパーツ忠男”の水冷ヘッド。

勿論、圧縮比は標準以上高くするため、ヘッドの合わせ面を旋盤で1mmほど削る。スペアとした空冷のヘッドも同様に加工して、水冷ヘッドを組み込んだが、ヘッドの厚みがあり、ナットとボルトの噛みあい寸法が十分ではないため、指定トルクまで(いくつか忘れた)締め付けられず、適当に締め上げてレースに参加。

但し、この当日、別の仕事が入りレース場にはいけなかった。もともとライダーは私ではないので、その友人にマシンを預けて結果を待つことに。

で、聞きました。レース結果を。すると「予選はブッチギリで、誰も付いてくる状態ではなかった」、「でも夕方の決勝前にパドックでエンジンを始動すると、ヘッドとシリンダーの間から火が噴出していたので、空冷のヘッドと交換し、しっかりとナットを締め、決勝に挑んだが、予選の走りは何処へやら」。結果は8位だったらしい。

何が変わってしまったのか。そのときには判断できなかったが、ある時、レーシングカートのエンジンで、常に速いカーターのエンジンをチューニングする人物は、ヘッドボルトをしっかりと締めず、軽く締める程度で、暖機運転中はヘッドとシリンダーの間から炎を噴いているが、暖機終了時にはピタリと治まっている、とか。

その目的は、シリンダーヘッドのボルトを締めることで、シリンダーやヘッドの熱膨張に対する歪を逃がすことが出来なくなり、その結果がシリンダーの真円度に出るので、エンジン性能の低下に結びつく、というものだった。

つまり、シリンダーヘッドを締めないことが、エンジン・チューニングには必要なことなのだ???

特に2ストロークでシリンダーとシリンダーヘッドを、クランクケースからの通しボルトで(スタッドボルト)締め付けているエンジンでは、エンジンが熱を持つことでシリンダーやシリンダーヘッドが膨張しても、締め付けボルトはそれほど延びないことから、暖機が終了する頃には、規定トルク以上にボルトを締めていることとなり、その歪は、シリンダーの内径に悪影響を与えるのだ。

それを熟知していたホンダ・スーパーカブ(SOHCでキャブ)エンジン開発責任者は、シリンダーとヘッドの締め付けボルトを吟味し、大部分の外径を細くすることで、必要以上に締め付け力(軸力というのだが)が高くならないようにしていた。

同様なことは、VWビートルの空冷エンジンにも見られる。1300~1600ccエンジンで、使用するボルトは長く、径は8mm。このヘッドボルト締め付けトルクは、確か3kg-m以下だったと思うし、いくら締めても、キッチリとした手ごたえを感じることはなかった。それで、あの安定した性能が得られていたのだ。

ある時、仕事の取材で、当時のチャンピオンエンジンを製作するショップにお邪魔したついでに、ヘッドのボルト締め付けについて聞いてみると「普通の方は、規定している締め付けトルクの±表示があると、ついついプラスの数値で締めますが、我々はマイナス数値で締めます」とのこと。「これは、ダミーヘッドボーリングやホーニングを行っても、熱が加わった状態での加工ではないため、それを見越してのことです」と話してくれた。なるほど矢張り・・・

F1エンジン(当時のチャンピオン、ルノーだったと思う)で、ある時、よく観察すると、どう見てもヘッドとシリンダーは一体構造。トヨタのエンジンでは、明らかにクランクケースとシリンダーが一体(一般のエンジンと構造が同じ)。

シリンダーとシリンダーヘッドが一体であれば、ヘッドガスケットを持たない構造となり、その部分の締め付けがないことから、ヘッドやシリンダーに対して締め付け歪、熱歪の影響が非常に少なくなる。シリンダーのボア大きく、ピストンのストロークが小さいレーシングエンジンなら、下側からヘッドの加工やバルブの組み立てなど、造作もないこと。

この、シリンダーとヘッドの一体構造は、実際に見たわけではないので“仮想”かと思っていたら、ある時、ケーブルテレビの番組で、アメリカのベンチャー企業が、F1エンジンのコンストラクターに参加しようと開発していたエンジンを見て、やはり、私の判断に間違いはなかった。一瞬だが、シリンダーの穴の先にヘッドが一体となっていることを見つけた。

2013年10月26日土曜日

クラッチ操作に慣れた人はお勧めしないNC700DCT

ホンダNC700Xの試乗記にアクセスする方が非常に多いので、興味をもたれる方は、当然、自動変速モデルのNC700S・DCTなどの評価も気にされるのでは、と言うことで、再び広報車両を拝借し、700kmほどのツーリングに使用した結果を報告したいと思う。
NC700の特徴は、何と言ってもガソリンタンク部分がフルフェイスヘルメットの入るトランクになっていること。それにより、宿泊を伴うツーリングでも、リヤに縛り付けるのは、雨合羽だけ 

ズバリ言って、バイクを乗り込んだ人には向いていない。それは、クラッチのマニュアル操作が出来ないことからだ。惰性走行は無理なばかりか、停止手前からニュートラルにして、クラッチレバーから手を放し、スムーズに停止する、などということも不可能。

また、スロットルをほんの少し開け、穏やかに走り出すと、時として2速へアップシフトした瞬間、軽い加速変化が生じる。この状態であると、タンデムに乗るライダーから「へたくそ」の声が飛ぶだろう。

更に、走行状態から減速、ブレーキという一連の行動に対し、確実にダウンシフトしながら、その都度エンジンブレーキを作動させるため、ガクガクという音と共に、減速ショックが出る。これも、タンデムライダーからの苦情となるだろう。彼女や女房だったら、「何しているのよ」と、ヘルメットを叩かれそうである。

急減速ではないことが、アクセル開度と速度の変化から分かるはずなので、ここでのプログラムは、エンジンブレーキを作動させない、クラッチを切った状態で停止までもっていくべきだ。そのようなことが分からない、実験屋さん達、或いはその上の方が居るのかもしれないが、実験走行パターンをサーキットではなく、峠から街の信号停止にすれば、直ぐに分かる状態だが。

バイクのクラッチ操作は、ただ単純に動力の断続をするだけではなく、一瞬繋いだ後に再びクラッチを切り、バイクのバランスを取り直す挙動を作る、というようなことにも使うし、ハンドルをロック近くまで切った状態を維持しながら、スムーズに動き出させるだけではなく、次の瞬間には停止が出来る。これがクラッチ操作のいいところだが、マニュアルクラッチ操作がないDCTでは、アクセルでのコントロール以外はない。エンジン回転の調節で不安定時の極低速を操るには無理がある。

ではスクーターだとどうなるのか?それは同じ状態とはならない。なぜかと言えば、左手でリヤブレーキの操作が出来るからである。リヤブレーキ(左手側)を掛けながら、アクセル操作でバランスを取り、微速前進などということは朝飯前。これが、DCT仕様では無理。だから楽しくないし(既に購入されてしまった方には申し訳ないが)疲労も溜まる。
タイプSはネイキッドだが、多少値段が高くても、カウル付を選びたい。高速走行では明らかな差になって、走行感覚に違いが出るからだ 

また、NC700シリーズの特徴である、加速時に楽しいグツグツ感は乏しくなってしまった。それは、おそらく重たいクラッチがフライホイール効果を増大し、更にクラッチの制御に使うオイルポンプも、回転変動の吸収を受け持つ結果であろう。これは楽しくない条件になってしまう。

マニュアルクラッチ仕様との違いは、コーナリングの特性にも出ていた。

もちろん、半ケツ落としで、肩から突っ込むような、サーキット走行ライディングは要求されるのだが(ツーリングバイクなのに!!!?)、そのアクションが、DCTの場合、更に大きなものを要求される。

この原因は、おそらくツインクラッチ構造によるものではないかと考える。クラッチの重量が増えれば回転マスも増えるわけだから、ジャイロ効果が強くなり、傾きを変えるには力加減が変わるはず。これによる影響ではないかと思う。

但し、この半ケツ落としライディングを行うと、フロントタイヤが小石に乗ろうが、小枝を踏もうが、バイクが不安定になることはない。それは、どういうことなのか走りながら考えてみると、ツーリングでは普通リーンウイズのコーナリング姿勢を取るが、その姿勢だとNC700の場合、ハンドルが切れ込んでくるので、それを抑えるように乗らなければならないため、腕には力が入ってしまう。

そうなると、バイク本来が持つ安定性はスポイルする形となり、益々不安定で、走りにくい状態を作り出してしまう。

ところが、半ケツ落としで、肩から入るライディングスタイルを取ると、自然にハンドルを強く抑える力がなく、バイク本来のスタビリティが前面に出てくるのだろう。

このときには、非常にニュートラルなコーナリング性能で安定性に富み、過激な状態に持ち込んでいるにもかかわらず、不安な様子が何処にもないのは不思議でもある。

その他、重要な部分である、ハンドルスイッチは使いにくい。特に左側はゴチャゴチャと各種のスイッチがあり、それらを使いこなすには、数ヶ月必要だろう。慣れれば問題ない、という表現があるが、なれる前に事故・・・ではどうする?

特に問題としたいのはホーンボタンの位置である。これまでは、フラッシャースイッチの下側にあったのだが、どういう訳か上側にある。ハンドルをグリップしている状態から、親指をホーンボタンにまで移動するには距離と角度が大きい。
一番下がギヤシフトダウンのスイッチ、その上がフラッシャースイッチ、更に上が緊急時に大切なホーンボタン 

緊急時に使うホーンだが、700km走行する間に3回ほど必要に迫られたのに、一度たりとも鳴らすことは出来ず、毎回フラッシュースイッチのキャンセル行為を行っていた。役立たずの代物だ。

書き忘れたことがあった。それはDCTシステムの制御に関すること。ギヤをNからDとするには、エンジン始動後にアクセルグリップ近くにあるレバーを左に1秒倒すことでNからDに、ガツンと入る。そのレバーは更に左へ倒すとSモードとなる。

マニュアルシフトに変更するレバーはその反対側、フロントブレーキレバー側にあるので、チョイチョイDからMにして走りを楽しむことは難しい。また、Sモードにしても、サーキットで使うような状態のシフトとなり、ツーリングの最中に、いくら峠であっても、あまりお勧めできない。

それなら、Dモード状態をフルに使い、ギヤダウンレバーとギヤアップレバーを操作し、走りこんだ方が楽しく安全で速いと思う。ただ、このDモードで注意したいのは、クルマで言うところの、キックダウン反応が遅く、また、ダウンシフトするときのギヤ位置も強力で、かつ理想的な加速力を得られる状態とは言えないので、ここは一発、Dモードのマニュアル操作に終始した方が懸命。

Dモードとマニュアルシフトをバランスよく使い分けられれば(慣れるまでに時間はかかるが・・・)、コーナリングの最中に、アップシフト或いはダウンシフトが求められたとしても、ライディングのバランスを崩すことなく、レバー操作だけで安定して駆け抜けられるのは、確かにDCTならではのものと言える。

700kmを走っての燃費だが、高速走行が約半分という条件で30km/Lだった。マニュアルクラッチ仕様のNC700Xでは35km/Lを記録していたが。確実に同じ条件ではないので、参考程度だろう。

2013年10月22日火曜日

凸凹道は両手放しで真っ直ぐ走るが、鏡のような道では決まらない変なクルマ

かなり前のことだが、北海道で行われたそのクルマの試乗会。当然コースはバラエティに富んでいて、舗装の崩れた道路から、鏡のように平らな道路まである。

当時の我々の試乗項目には、ハンドルから両手を離した状態で、何処まで真っ直ぐ走るか、と言うようなことを組み入れていた。

その試乗車は、ステアリングとサスペンション周りも一新して、これまでにない直進安定性を確保した、と言うことがキャッチフレーズに盛り込まれていたが、走行ラインが何となくピタリと決まらないので、何処まで本当なのだろうか、と言う気持ちから両手放し走行を、鏡のように平らで凸凹のない道路でやってみた。

するとどうだろう、いつの間にか右へ行ったり、左へ来たり。シャキッと走らない。

この状態だと、舗装が壊れた凸凹道では、何処へ行くか危険だから、両手放し走行などやれるわけがない。デモ、恐る恐る両手をハンドルから放してみると、あら不思議、サスペンションは大きく作動しているものの、走行ラインに乱れは出ず、数百メートル両手放しで、普通に走りきってしまったのだ。

これ、普通は逆のはずだが、何か変である。第一、舗装のしっかりとしている道がほとんどの日本では、クルマの資質としては逆なので、疲労の多い状態となることが懸念された。

その原因について、当初の開発者はこちらの質問を素直に聞くつもりはないようで、結論が出なかったが、その後の情報で、その開発者は技術力がない人物だった、と言わざるを得ないことが判明。

その情報とは、フロントサスペンションが作動することで起きる、タイヤのトー変化を出来るだけ抑えて、直進安定性を高めるため、これまでと違うステアリングのラック&ピニオンからタイロッドに至る構造を取っていたことが原因で、タイロッドの重さとボールジョイントの摩擦が関係している、というものだ。

その構造を図示してみた。上が普通のラック&ピニオンからタイロッドに至る構造で、下が問題となったクルマに採用されていた構造。
上が普通のラック&ピニオンとタイロッドの関係位置。下がタイロッドを長くすることでサスペンション作動時のタイヤトー変化を小さく抑えるタイロッドの長さと位置関係。タイロッドが重く、垂れ下がり状態となり、フリクションが大きくなって、初期の動きが悪くなった結果、鏡のような平らな道路での直進性に問題が出た

何処が違うか一目瞭然。タイロッドの長さが違う。長ければサスペンションの上下動で変化するボールジョイント部分での円弧が大きくなり、強いてはその末端に取り付けられているナックルアームに影響を及ぼすことも少なく、タイヤはトーの変化が小さくなる。と言う構造で、素晴らしいものなのだが、作りこみと煮詰め不足により、問題点を我々が見つけてしまったのである。

このような問題のあることを、メーカーの開発人は認識していなかったと断言できる。それは、見かけ上の対策として、ごまかしが出来る内容だからだ。

しかし、そのような問題が、何故起きるのか、何処がまずいのか、更に一番の問題は、このようなことが起きていることを知っていたか、それが分かっていなければ、試乗車に対策することは出来ない。言い方が悪いが、分かっていなかったと断言できるのである。

何故、タイロッドを長くしたら鏡のような平らな道で直進安定性が出なかったのか。

それは、長いタイロッド=重量がある。と言うことで、常に垂れ下がり状態であり、更に、その垂れ下がったところは摩擦も大きい。動くもの同士が一度動きを止めて一体となると、再び動き出そうとするときの力は大きなものが要求される。これはボールジョイントのような、摩擦を使って回転や作動位置を決めているものも同様で、それが使い方と、一部の構造により悪さが出ることもある。

クルマが安定して真っ直ぐ走るには、タイヤからの外乱を受け流す構造が重要(レーシングカーとは考え方が違う)で、そこにあるタイロッドの長さと構造がどのようなことになるか、理解されていなかったことと思われる。つまり、動きの渋いタイロッドが全ての原因である。そのため、以後この構造を持つクルマは作られていない。

このタイロッド構造を持つクルマは1987年にVWサンタナとして、ニッサンがノックダウンし、日本でも発売されていたが、しっかりと作りこみがなされていたのだろう、これまで書いたような問題点はなかったように記憶する。


2013年10月9日水曜日

シンクロが弱くなったMTにATFを使うとどうなる?

実は、ATFをMTのオイルとして使用する、と言う方法は、実績を持っており、数種類のATFを使っての実験もある。

それは、ジムカーナ走行用にチューニングした、ニッサン・シルビアS13NA仕様。

ジムカーナのコースには180度ターンがあり、半径が3mほどであるため、リヤをスライドさせながら、カウンターステアをきれいに決めないとスムーズに通過しないのだが、重要なのは、速度を低下させない走りの中で、一瞬のうちに1速ギヤへのチェンジを必要とすること。

MTそのものがダブルコーンやトリプルコーンシンクロならともかく、そうではないシルビアでは、どうしてもシフトが遅れる。

そこで当初はガレージに転がっていたディキシロンⅡのATFで試したが、僅かに向上したものの、完璧とはならない。

次は、当時発売されていたニッサンセドリックに採用されていたトロイダルCVT用のATFを入手することだったが、部品販売はないという話。ATF交換などの必要性が出た場合には、全てディーラーがその特殊なATFを管理し、メンテな必要なクルマにのみ対応すると言うことなのだ。

トロイダルCVT用のオイルなら、その要求度高さから、たぶんMTのシンクロも格段に作動性が良くなるはずだが・・・仕方がないので、同じニッサンのハイパーCVT用のATFを購入して、入れ替えてみると、ここでもシフトの向上があり、何とか納得できる範疇に収まった。

このようなことがあったので、走行距離が多くシフト操作がスムーズではない、スズキ・エブリイワゴンMTに、ATFを使用する作戦に出た。原因は主にシンクロの磨耗にあることは明白。

この、へたったシンクロの対策をしてくれそうなのが、使用するオイルである。MTに求められるオイルは、あくまでも潤滑だが、オイルの切れがよければシンクロの滑りを抑制する効果がある。つまり、シンクロの作動が回復する?

ATFに要求されるものは、数万回転するギヤやベアリングの潤滑とクラッチ板を確実に保護しながら接続する能力、そして、作動油としての粘度である。

こうして見ると、MTにだって当てはまるものがあるわけだし、その要求度はATの方が高いとなれば、問題を抱えるMTにATFを使用するメリットはある。

実は、トヨタでも小型車のディーゼル搭載車MTに対し、ミッションオイルはATFを使用していたことがある。その理由は、ギヤオイルとしての性能が高く、攪拌抵抗も小さいことから、走行に対して有利だからと言うこと。ただし、ニュートラルのときアイドリングでクラッチペダルから足を離していると、ミッション内のギヤ歯打ち音が出るため、エンジン騒音の高いディーゼルだけにしているそうだ。

また、レースでの使用で実績もある。それは、3速のシンクロがへたったクルマ。筑波サーキットでのレースだから、3速の使用頻度は高く、シフトのたびにギヤ鳴りがしていてはシフトに時間がかかる。僅かな時間でも、ラップタイムには影響する。

そこで、ATF(ディキシロンⅢを使用)にギヤオイルを交換してみた。すると、これまでのことが嘘のように、シフトは気持ちよく決まったのだ。

このような経験から、即座にMTオイルをATFに交換。どのような結果になるかは、予想していた通り。

その効果は直ぐに現れ、徐行中の1速へのシフトが軽い。素早い2速へのシフトもスムーズ。これまで、タイミングを計らないとギヤ鳴りしていたのが嘘のようにない。

そして、気にしていた停止時ニュートラルのギヤ歯打ち音は、注意しなければ変化に気がつかない程度。これは、おそらくギヤが小さいため回転マス変動に対する追従性が高いからだと思う。

なお、このようなATFの使い方について試す場合には、全て自己責任でお願いしたい。
用意したのは2リッターほどのATFディキシロンⅢ.電動のオイルチェンジャーを逆に使って押し込む

バッテリーに接続しスイッチを入れれば、粘度の小さいATFは気持ちよく送り込まれる


2013年10月1日火曜日

南カリフォルニアで行われた“NISSAN360”会場で、リーフのレーシングカーをドライブ

NISSAN360会場には、特別なクルマも用意されていた。それが、リーフの動力系を流用して作られた「リーフRC」だった。

パワートレインは同じだからモーターの出力は80kW(107hp)。トルクは280N・m。バッテリーも同じものを使用しているので24kWhと言うことになるが、そのほか全てが違うのは当然のこと、と言っても過言ではない。

ボディ周りはレーシングカーであるから、目的志向は強く、サーキットでの走行しか計算していないので、大きなリヤウイングを装備し、全長は20mm長い4465mm。全幅は172mm広い1942mm。全高は333mm低い1212mm。そして車重は595kg軽い925kg。

また、前後重量配分と重心位置を理想なものとするため、バッテリーパックはシート後部のミッドシップへ。インバーターとモーターなどの駆動系はリヤに配置している。ここまでやってポテンシャルを引き上げていれば、ドライバー次第で、性能は十分に引き出せることは請け合いだ。

実は、このリーフRC、2011年のEVフェスティバルに展示されており、会場の筑波サーキットで広報の方に「乗せて」と、冗談半分に話をしていたのだが、それが現実になったことに若干興奮していた。

リーフRCに乗り込むには、着脱できるステアリングのおかげでそれほど難しいことではないが、レーシングシートのバケットは、しっかりと腰回りをサポートしてくれるようになっているため、そこに滑り込ませるには、多少の無理を強いられる。
これリーフをベースにしたレーシングカー。但しベースとなっているのは動力や駆動系だけで、純然たるレーシングカーである。クラッチもミッションもない分扱いやすさが光る 

フルハーネスのシートベルトは、アメリカ日産の方が装着を手伝ってくれるため、手間がかかることはない。ベルトを引き締めてから、更にシートスライドを前方へ移動させることにより、確実にシートに固定される。これで準備万端。

もちろん2ペダルで、左足でのブレーキ操作がしやすいように設計されているのは、ATのブレーキペダルを、基本的に左足で踏む私にとってはうれしい限りである。

そして、万が一のことを考えて、助手席には関係者が同乗。更に、テクニカルなコースでは、ナビ的に曲がる方を指し示してくれる。シート高が低く、コースは白線を引いたところもあるため、何処が走行ラインなのか、見えないこともあるからだ。

ゆっくりスタートラインに着くと、すぐさま“GO”のサインが出る。

ここぞとばかりにアクセルは床まで踏みつける。するとタイヤは、ズズズッと言う摩擦音を発し、ホイールスピンに近い状態を作り出しながら、完全トラクションでダッシュ。
大きなリヤウイングが目立つ。その効果がどのくらいであるかの体験は???当然リヤドライブである 

ところが車重が標準のリーフより600kg近く軽いこと、重心が低くタイヤとレッドの広いことが十分に効いて、ハンドリングは強烈に反応する。また、サーボを持たないブレーキの初期制動に一瞬戸惑うものの、強く踏みつける状態でもコントロールのしやすさを理解できると、以後は限界までブレーキを遅らせて、僅かに出るアンダーステアは左足のブレーキで、それを収め、すぐさまアクセルはベタ踏み。

次の瞬間、リヤが流れるような挙動を見せるが、そこはそれ、モーターの特性から、回転が増すとトルクが低下するため、マシン自体が自然にトラクションを回復させ、アクセルコントロールもステアリングの修整もほとんど必要なく、しっかりと押さえ込んでいれば、確実に狙ったラインをトレースする。

あっという間に1周が終了。同乗してくれた現地の方からは「パーフェクト」と言うお褒めの言葉を頂戴、自分でも納得の出来る走りだった。