研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2014年11月15日土曜日

不定期連載 数式を使わない、クルマの走行安定性の話・5/17


サスペンションメンバーを使えば、外力を分断して計算出来る

最近のクルマには、サスペンションメンバーを採用することが多くなってきた。このメンバーを取り付けることで、サスペンション全体の剛性を高められた、という話を聞くが、これに対する考え方は少し違って、剛性だけではない。メンバーを採用すると言うことは、応力をそこで寸断できることを意味する。つまり、サスペンションアームから入り込んだ外力に対する計算を分断できる。

外力を分断できるということは、ねじりや曲げの力に対するボディ剛性とも関係する。それは、ある程度のボディ剛性を持ったものに対して、サスペンションメンバーを高剛性に造り、それに併せてサスペンションアームを造った場合でも、ある一箇所から入った外力をボディに伝えることなくブッシュのストロークと、各アームのたわみで処理し、サスペンションを設計値どおりに作動させることが可能になる。

また、外力を他のサスペンションメンバーに伝えないということは、ボディに対するゆがみや、前後アライメントの狂いは発生しないわけで、クルマは直進安定性が高くなる。つまり、極端にボディ剛性を高めた場合と同じこと。初代ゴルフに見られたボディ設計とその直進安定性からも分かる。もちろん、高速安定性にはそれまでの日本車では考えもしなかった秘密があった。それは、フロントサスペンションの高速走行時に発生するアライメント変化を利用したもので、これについてはあとで説明する。

どれくらいの力が、どのように及ぼすか分からないときには、前記ように分断し、それぞれ独立して設計をする。このようなことは建設、特に橋梁には当然のこととして行われる。それは、橋桁と柱の取り付けに関してである。

一見すると一つの橋梁で、橋桁は1本につながっているかのように見えるが、実は柱間にかかる橋桁を1スパンとした、同じもののつながりなのである。あくまでも柱と柱の間だけにかかる橋桁だけで、どのような荷重が掛かり、その荷重が移動していったとき、どのように橋桁がたわむかの計算を行う。ごく単純な荷重の計算であり、後は地震に対するマージンを上乗せすれば事足りる。そして、造られた橋桁は、落下しないように片側だけ柱に取り付けられるが、あくまでもピンによる取り付けで、たわみを吸収する構造。反対側の柱に対しては、固定するものは何もなく、自由にスライドする。

両側ともにピンのないものもある。そのような構造の場合には橋桁の上に乗る道路や鉄道の道床が、橋桁のずれを防ぐような取り付けを行う。

では何故一つの橋梁で、橋桁を1本につないではいけないのだろうか。それは、一箇所に掛かった荷重が、柱を支点として、そこに掛かっている、全ての橋桁と柱に対し、影響を及ぼし、その結果、上からの単純な荷重ばかりでなく、支点による逆の、下からねじり上げられる力も入るからだ。

当然用件は無限大にある。そして、作用反作用の応力に対する計算はとてつもなく莫大な量でむずかしい。もちろんそれに対する橋桁の構造はとてつもなく巨大なものとなる。柱と柱の間が全て埋め尽くされる構造、言ってみればダムのような形になってしまう。ところが、1スパンだけの構造計算であれば、ごく単純に終わり、構造も単純になる。

この考えを元にしてクルマのボディ構造と、サスペンション構造を設計すれば外力/応力をうまく分散するようなクルマの設計が出来るはずである。そのひとつの現れが、サスペンションメンバーを採用した方法といえるのではないかな。なお、メンバーとボディとの取り付けは、ボルトによるダイレクトな締め付けであっても、あるいはブッシュを使っていても、必要な目的は達せられる。ただし、ブッシュを使った方が、より分割した外力に対する計算がしやすいと思う。