研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2013年10月9日水曜日

シンクロが弱くなったMTにATFを使うとどうなる?

実は、ATFをMTのオイルとして使用する、と言う方法は、実績を持っており、数種類のATFを使っての実験もある。

それは、ジムカーナ走行用にチューニングした、ニッサン・シルビアS13NA仕様。

ジムカーナのコースには180度ターンがあり、半径が3mほどであるため、リヤをスライドさせながら、カウンターステアをきれいに決めないとスムーズに通過しないのだが、重要なのは、速度を低下させない走りの中で、一瞬のうちに1速ギヤへのチェンジを必要とすること。

MTそのものがダブルコーンやトリプルコーンシンクロならともかく、そうではないシルビアでは、どうしてもシフトが遅れる。

そこで当初はガレージに転がっていたディキシロンⅡのATFで試したが、僅かに向上したものの、完璧とはならない。

次は、当時発売されていたニッサンセドリックに採用されていたトロイダルCVT用のATFを入手することだったが、部品販売はないという話。ATF交換などの必要性が出た場合には、全てディーラーがその特殊なATFを管理し、メンテな必要なクルマにのみ対応すると言うことなのだ。

トロイダルCVT用のオイルなら、その要求度高さから、たぶんMTのシンクロも格段に作動性が良くなるはずだが・・・仕方がないので、同じニッサンのハイパーCVT用のATFを購入して、入れ替えてみると、ここでもシフトの向上があり、何とか納得できる範疇に収まった。

このようなことがあったので、走行距離が多くシフト操作がスムーズではない、スズキ・エブリイワゴンMTに、ATFを使用する作戦に出た。原因は主にシンクロの磨耗にあることは明白。

この、へたったシンクロの対策をしてくれそうなのが、使用するオイルである。MTに求められるオイルは、あくまでも潤滑だが、オイルの切れがよければシンクロの滑りを抑制する効果がある。つまり、シンクロの作動が回復する?

ATFに要求されるものは、数万回転するギヤやベアリングの潤滑とクラッチ板を確実に保護しながら接続する能力、そして、作動油としての粘度である。

こうして見ると、MTにだって当てはまるものがあるわけだし、その要求度はATの方が高いとなれば、問題を抱えるMTにATFを使用するメリットはある。

実は、トヨタでも小型車のディーゼル搭載車MTに対し、ミッションオイルはATFを使用していたことがある。その理由は、ギヤオイルとしての性能が高く、攪拌抵抗も小さいことから、走行に対して有利だからと言うこと。ただし、ニュートラルのときアイドリングでクラッチペダルから足を離していると、ミッション内のギヤ歯打ち音が出るため、エンジン騒音の高いディーゼルだけにしているそうだ。

また、レースでの使用で実績もある。それは、3速のシンクロがへたったクルマ。筑波サーキットでのレースだから、3速の使用頻度は高く、シフトのたびにギヤ鳴りがしていてはシフトに時間がかかる。僅かな時間でも、ラップタイムには影響する。

そこで、ATF(ディキシロンⅢを使用)にギヤオイルを交換してみた。すると、これまでのことが嘘のように、シフトは気持ちよく決まったのだ。

このような経験から、即座にMTオイルをATFに交換。どのような結果になるかは、予想していた通り。

その効果は直ぐに現れ、徐行中の1速へのシフトが軽い。素早い2速へのシフトもスムーズ。これまで、タイミングを計らないとギヤ鳴りしていたのが嘘のようにない。

そして、気にしていた停止時ニュートラルのギヤ歯打ち音は、注意しなければ変化に気がつかない程度。これは、おそらくギヤが小さいため回転マス変動に対する追従性が高いからだと思う。

なお、このようなATFの使い方について試す場合には、全て自己責任でお願いしたい。
用意したのは2リッターほどのATFディキシロンⅢ.電動のオイルチェンジャーを逆に使って押し込む

バッテリーに接続しスイッチを入れれば、粘度の小さいATFは気持ちよく送り込まれる