研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2011年8月26日金曜日

イグニッションコイルに外部抵抗器は何故必要か その2

今でこそ見たことのない人が多くなったポイント式の点火装置。そこに使われてきたイグニッションコイルは、そのままであると高回転に対応しないという状況が出ていた。それを解決したのが一次コイルの巻き数を減らし、減らした分の抵抗をプラス端子に直列配線すること。これがトータルの抵抗を同じに設定した外部抵抗器付きのイグニッションコイルということになる。

自己誘導作用と相互誘導作用というものを利用して、高電圧を発生させるのがイグニッションコイルの役目となることは前回説明した。

構造的なことから見ると、ポイントを閉じて一次コイルへ電流を流した後、ポイントを開いたときの一次コイルにおける自己誘導作用で発生する高電圧を、一次コイルと二次コイルの相互誘導作用で更に昇圧させることで、その瞬間、点火プラグにはスパークが起きる。
コイルに直流電流を流しても逆起電力の関係で、最大となるまでに僅かに時間がかかる。その時間はコイルの一次抵抗により変わる。抵抗が小さければ時間は短くなる

一次電流と二次電圧の関係をグラフで見ると、スイッチをOFFした状態からONしたときにも電流は変化し、磁界は発生するが、コイルのインダクタンス(誘導係数のこと。回路に電流を流したときの電磁誘導の大きさを表す定数で、誘導起電力と電流変化の比)のため電流は急激に流れないので、それによる磁界の変化も緩やかに立ち上がり、二次コイルに誘導される電圧は低く、点火プラグへスパークさせるような放電電圧に達しない。
スイッチ(ポイント)が開いた状態から閉じるときにも電流は変化するが、コイルの自己インダクタンスのため、電流は穏やかに流れるため磁界の変化も小さく、二次コイルに誘起される電圧は低く、放電する状態にはならない

大きな相互誘導起電力(点火プラグへの電圧)を得るには、一次コイルへ流れる電流を出来るだけ大きくし(限度がある、発熱が大きいと磁界が低下して起電力が低下する)、その電流の遮断を急激に行えば良いことになる。

ここに流す電流の大きさと、その遮断速度が磁束の変化の速さ、更に磁束変化量の大きさに直結する。つまり、点火エネルギーに影響を及ぼすことになる。

ところがエンジン回転が高くなると、ポイントの閉じている時間は短縮される。これは一次コイルに電流を流す時間が短くなり、その電流も低下してくる。

一次電流の低下は、つまり二次電圧に関係して、十分な昇圧とはならず失火が起きる。これを防ぐのが、外部抵抗器である。

フルトランジスター点火などでは、閉角度制御(ポイントでいうと閉じている時間を制御すること)なるシステムを組み込んで、ある回転以上となると一次コイルに流す電流の量を多くしているが、普通のポイント式ではそれが出来ない。そこで考え出されたのが、一次コイルの巻き数を減らし、減らしたことで起きる抵抗の低下を、外部に抵抗を取り付けて補うという方式。その抵抗はインダクタンスに関係なく、電圧とのつじつまを合わせることに作用する。

一般的な例で言うと、ポイント式点火装置で使われる普通のイグニッションコイルは、一次コイルの抵抗値が3Ω程(12V専用)だが、それを1.5Ωとした場合のコイルの巻き数は半分となり、そこに流す電流を妨げるインダクタンスは小さくなる。

言い換えると、イグニッションコイルに電流を流しても、直ぐにコイル全体へ行き渡るわけではなく、例えば3Ωのイグニッションコイルでは0.01秒掛かるが、それを1.5Ωとすると0.006秒に短縮する。これが重要なことで、高回転或いは多気筒エンジンでは、このように電流の立ち上がり(コイルへの満充電)を素早くしないと点火性能は発揮されない。

インダクタンスが小さくなるとコイルに流れる電流は直ぐにいっぱいとなり、点火性能を確保できるというわけだ。

テストベッドに使っているIGコイルへ流れる電流を計測すると、4.20アンペア

コイル本体の一次抵抗は1.7Ω。外付け抵抗器で3Ω近くになるよう調節する。そうしないとコイルに流れる電流が多くなり、発熱による弊害が起きる

外付け抵抗器を通して一次コイルの抵抗を測ると2.8オーム

外付け抵抗器の抵抗部分は、電流が多いので巻き線抵抗となっており、発熱(火傷するほど)するため、絶縁部分は碍子を使用する。抵抗の数値は1.2Ωとなっているが、実際とは少し違うようだ。この程度は問題ない