研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2011年2月1日火曜日

改造プラグから始まった着火性に優れる点火プラグを考察する

20年以上の前だが、改造プラグの流行った時期がある。きっかけは、当時の読者がアイディアを出して実験した“スラントプラグ”という名称のものだった。このようなことから、当時は私もいろいろな形状の改造プラグを作り、紙面展開した。

改造はエスカレートし、接地電極を二つに切り開きV字の電極にしたものまで造ったが、熱負荷が心配だったので高負荷で使うことはしなかったが、当時はそれなりに効果があったように記憶している。このような経緯からスピリットファイヤーの切り開いた接地電極は、当時私が考えて誌面に発表したため、日本では私以外特許申請できない状態にある。

その後プラグメーカーはいろいろな形状の電極を開発したが、真似のできるのは、日立のクロスカット。中心電極に十字の切込みを入れただけのものだったからだ。直ぐに自作したが、結果は不明だった。

点火プラグがこのままで行き着くところにきているのかと思っていたら、どうやらそうでもなさそうな気配だ。これまでの考え方や求められることは、安定したスパークを長期に渡って確保することに主眼が置かれていたのだが、最近では、単に燃焼させれば良いのではなく、より確実に燃焼させることに目標を変えてきた感じで、燃焼室内に対する電極の向きがどのような影響を持つのか、あるいは、その向きによって失火が起きる可能性はどのくらいなのか、などの研究が行われ、どのような形状の電極が理想的なのかの研究も行われ始めた。

電極を細くする理由は、エッジや細い部分からのスパークが自然であり、耐熱金属では磨耗するために、白金やイリジウムと言う金属を使用している。また、細くすることで、熱引きが小さくなるため、スパークによる火炎核が小さくなりにくく、点火エネルギーに繋がるため、失火が少なくなることも細い電極を使う理由だ。

最近の研究課題は、高効率を目指した小排気量の高出力エンジンに対する、厳しい温度環境と振動などに耐え、ヘッドへ取り付けられたときの電極の向きが理想的ではなくても、失火が起きにくい形状などが求められている。また、どのような方向から混合気が電極の間を通過するかは、エンジンの造り方で変わってくるため、一概に方向を決められないこともある。

基本的な実験では混合気が電極の間に入ってくる角度を0度、90度、180度などで確認すると、0度と90度は理想的だが、180度は失火が起きやすいということになっており、これは実験などしなくても空気の流れを考えればおのずと分かる。そのため、私は気筒数以上のプラグを用意し、締め付け後の電極の向きを整え、アイドリング時の失火改善に役立てている。


1.これがスラントプラグと命名された改造プラグ。中心電極を斜めにヤスリで削り、それに沿わせるように接地電極をねじっている。どのような理屈でこの形になったのか説明はなかった。

2.混合気がプラグの下から迫って来たときでも、接地電極が邪魔をしないよう、ふたつ割にして、接地側のどちらからでもスパークが起きるよう考慮した。条件の良いほうでスパークすることにより、要求電圧は下がり点火時期は安定するばかりではなく、点火コイルの発熱も少なくなるので、安定する。と考えて造った改造プラグ。

3.日立のクロスカット。中心電極に十字に切り目を入れただけ。エッジを多く造りスパークしやすくしたのだろう。これならまねは出来そうだ。

4.接地電極の位置から本物のようには行かないが、45度ずれた位置にクロスカットを作る。金属用の糸鋸を使えば可能だ。ただし、いずれの改造プラグも削りカスの除去に十分な注意が必要。また、接地電極を曲げ伸ばしするので、劣化による折れも十分に考慮する必要がある。

5.これらが高着火プラグと呼ばれるもので、現在の主流だが、やはり締め付け後の電極角度によって、失火の原因を作り出しやすい。

6.失火の原因を作り出しにくい電極形状と、熱・振動耐久性をこれまで以上に高めたプラグ。右の電極形状は失火のリスクを少なくするらしい。着火性としては僅かだが左の形状という結論。いつごろ販売が開始されるのだろうか気になる。